歯およびその周囲組織の疾患から起こる三叉神経分布領域の疼痛。

＊三叉神経支配領域

上歯痛:三叉神経第2枝(上顎神経)の上歯槽神経の知覚領域

下歯痛:三叉神経第3枝(下顎神経)の下歯槽神経の知覚領域

【現代医学的な考え方】

1）う歯（齲歯）：虫歯。ミュータンス連鎖球菌などのう蝕原性菌が作り出す酸により、歯牙硬組織からカルシウムを主体にした結晶が溶けていく現象。

2）歯周病

　①歯肉炎：歯石沈着·不適合な補綴物などにより歯肉溝に歯周囲菌が侵入して発生する歯肉の炎症。歯間乳頭部を中心に歯肉が発赤·腫脹。歯が浮き痛む。

　②歯槽膿漏：慢性辺縁性歯周炎。歯肉炎の炎症が歯根膜周囲に及び、歯槽骨を融解していくもの。

3）三叉神経痛：三叉神経領域に針で刺されるような痛みが出現するもの。

4）顎関節症：開口運動に障害をきたしたり、開口·閉口時に痛みが出現するもの。

【東洋医学的な考え方】

1.関連する臓器：腎···「腎は骨を主る」、「歯は骨余」

2.関連する経絡:手足陽明経はそれぞれ上下歯に循行。

上歯痛➡︎足の陽明胃経、下歯痛➡︎手の陽明大腸経。

3.原因別分類

1)実証の歯痛

手足陽明経はそれぞれ上下歯に循行。大腸や胃の熱(火)➡︎経脈にそって上炎➡︎歯痛歯肉の腫脹·発赤を伴い、疼痛が強い。

　①実火による歯痛

辛いもの·甘いものの偏食➡︎胃腸の熱(火)➡︎陽明経脈にそって歯に影響➡︎歯痛舌質紅、舌苔黄、脈洪数または滑数。

　②風火による歯痛

陽盛体質で内熱がある者➡︎風邪の侵襲➡︎風火➡︎陽明経脈にそって歯に影響➡︎歯痛

　③う歯による歯痛

2)虚証の歯痛

腎陰虚(虚火)による歯痛。腎陰虚➡︎虚火上炎➡︎歯痛

時々起こる歯の鈍痛、歯肉の軽度の腫脹・発赤、歯が浮いて動く。

午後または夜間に増強。舌質紅、舌苔少、脈細数。（歯の動揺·腰痛·耳鳴りなど）

【当院の歯痛の鍼治療】

共通穴：頬車、下関、合谷

(1)実証例(実火による歯痛)

　①方針:実火の清熱による止痛、

　②処方例:清熱···足陽明経穴に、鍼にて瀉法。内庭、上巨虚。

(2)虚証例(腎陰虚による歯痛)

　①方針：補腎陰による虚火の清熱。疏通经络

　②処方例：

補陰···足少陰経穴に、鍼にて補法。太渓。

清熱···手足陽明経穴に、鍼にて瀉法。内庭、合谷。

それ以外：上歯痛：顴髎、四白など、下歯痛：大迎、頬車、下関、オトガイ孔など。