脱毛症は、何らかの要因によって正常な範囲を超えた抜け毛が起こることを指します。脱毛症の原因としては、特定の疾患や薬物投与による副作用、外傷等に起因する脱毛症や先天性の脱毛症や男性型脱毛症、円形脱毛症などがあります。この中で鍼灸治療の適応となるものは円形脱毛症です。最近の研で、円形脱毛症の原因についてはストレスが大きな一因となるのではないかと指摘されています。

脱毛症の分類：

1）円形性脱毛症

突然、無自覚に、主に頭部に円形または楕円形の境界明瞭な脱毛斑を生じる。左右非対称性。

原因不明（自律神経失調、精神的ストレス、自己免疫疾患など）

単発型、多発型、全頭型、汎発型（全身の毛が脱毛）に分類。

学童期、青年期に好発。多くは数か月で自然治癒するが、再発例も多い。

2）男性型脱毛症

全頭部または頭頂部より年齢と共に徐々に薄くなり、

進行すれば後頭～側頭部を除いて脱毛する。脱毛斑は左右対称性。

原因不明。遺伝的素因に、男性ホルモンが関与して起こる。

生理的現象で、進行を遅らせることはできても回復は期待できない。

＊女性の脱毛

①びまん性脱毛:全体的に脱毛して薄くなる。原因は、加齢やストレスなど様々。

②分娩後脱毛症:妊娠・出産に伴うホルモン分泌変化の影響。一過性。

③男性型脱毛症:女性も卵巣や副腎で少量の男性ホルモン分泌があるため。

3)トリコチロマニア(抜毛癖、抜毛狂)

主として頭髪、睫毛、眉毛などを衝動的に自分の手で引き抜く症状。

精神·心理的要因が関与。

学童期～思春期に好発。

随伴症状：爪咬症、食毛症。

【東洋医学的な考え方】

東洋医学的名称：「髪堕」

⒈関連する臓腑: 

腎···髪は腎の華

肝···肝は血を蔵す

⒉原因別分類

1)血熱による脱毛

精神的刺激⇨心火が盛んになる⇨血熱により内風が生じる⇨脱毛

部分的な脱毛が多く、全身症状は著明ではない。口渇、便秘、尿が黄色。舌質紅、舌苔黄。

2）瘀血による脱毛

精神的刺激など⇨気滞血瘀⇨毛髪の栄養不良⇨脱毛

舌質暗紅または瘀斑、脈濇。顔色がどす黒い、頭痛など。

3）気血両虚による脱毛

慢性疾患や産後⇨気血両虚⇨毛髪の栄養不良⇨脱毛、慢性病や産後に発症。舌質淡、脈細弱。

4）肝腎陰虚による脱毛

肝腎陰虚⇨陰血不足⇨毛髪の栄養不良または血燥⇨脱毛

毛髪は柔らかく油状の光沢があり、頭皮の脂が多い。舌質紅、舌苔少、脈細数。

【当院の脱毛症の鍼治療】

実証例「血熱·瘀血による脱毛」

手足陽明経穴、足太陰経穴。鍼にて瀉法。局所治療も行う。

経穴：膈兪、三陰交、血海、風池

虚証例「気血両虚・肝腎陰虚による脱毛」

足厥陰経穴・足少陰経穴の原穴・背兪穴、手足陽明経穴。鍼にて補法。局所治療も行う。

経穴:太溪、腎兪、血海、足三里　

 

円形脱毛症の鍼治療についてご紹介します。

中医学の視点から見た場合、円型性脱毛症は「肝鬱気滯（かんうつきたい）」の外在表現である場合が多く見られます。