顔面神経の障害により、表情筋の運動や味覚などに麻痺が生じたもの。

（1）末梢性顔面神経麻痺

➀ベル麻痺(突発性末梢性顔面神経麻痺)

原因不明だが、ウイルス感染他の原因で顔面神経管が腫脹すると、管の中で顔面神経が圧迫·拘扼され麻痺をきたすと考えられている。単純ヘルペス関与説が有力。通常、一侧性の末梢性麻痺を呈する。突発性·急性に発症。

《症状》

·額のしわ寄せ、眉の挙上が出来ない。

·閉眼が出来ない。眼が乾燥 流涙、兎眼、閉眼。努力により眼球が上転——ベル現象

·鼻唇溝が浅く、頬を膨らませることが出来なくなる。

·口角下垂し、健側に引かれる。

·口笛が吹けない。

·舌前2/3の味覚障害

·涙·唾液の分泌障害

·聴覚過敏

②ハント症候群

帯状疱疹ヘルペスウイルスに感染して起こる顔面神経麻痺。

〈症状〉顔面麻痺はベル麻痺の症状と同様

·耳痛、耳鳴り、難聴、聴覚過敏、めまい。

·外耳道、耳介に疼痛を伴う疱疹あるいは発赤。

　(2)中枢性顔面神経麻痺(核上性または核性顔面神経麻痺)

大脳皮質～顔面神経核（橋部）の走行中で顔面神経核より上位で、脳の病変（脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、脳炎など）によって、顔面神経が損傷されることにより起こる。額のしわ寄せは可能。

＊鑑別のポイント＊

末梢性か中枢性かを鑑別するポイントは額のしわ寄せが出来るかどうか。

【東洋医学的な考え方】

「面癱」、「口眼歪斜」(口や目が歪んで閉じることが出来ない)

⒈原因別分類

(1)風寒による顔面麻痺

    風寒の邪が顔面の経絡(陽明経、少陽経)に侵襲➡️経気の循りを障害➡️経筋が滋養されないため弛緩➡️顔面麻痺

＜随伴症状の違いによる分類＞

a.少陽タイプ(病が主として少陽波及しているもの) 

    耳後・耳下の疼痛、聴覚過敏

b.陽明タイプ(病が主として陽明に波及しているもの) 

    麻痺側の舌前2/3の味覚減少または消失

c.肝血虚タイプ(長期化して肝血虚に進化しているもの)

  患側筋の拘縮あるいは攣縮

治療方針としては血流改善により顔面筋の萎縮予防、神経機能の回復促進。風邪の除去により顔面の経気の巡りを良くし、経筋の栄養状態改善を図る。

治療ツボ：翳風（茎乳突孔部）

治療ツボ：陽白、攅竹、四白、地倉、觀髎、太陽、迎香、承浆

鍼灸治療しながら運動療法は必要です。

顔面部の自動·他動運動、表情運動（額のしわ寄せ、眼の開閉、鼻翼·口の運動、頬を膨らます、口笛を吹く等）

顔面神経麻痺の症例紹介